刊行が遅れていた『URCレコード読本』(シンコーミュージック)がいよいよ発売となった。日本のフォーク/ロック・レーベルの本ではあるけれど、URC関連のミュージシャンはアメリカン・ルーツ・ミュージックからの影響を受けている人も多いので、そのあたりの話を少し。
URCbook
URCレコード読本
シンコーミュージック
2020-07-31

 このムック自体について興味のある方は、こちらをご覧ください。

 ルーツ・ミュージックの世界では、古い歌の歌詞を替えて新しい歌を作る行為は、ごく当たり前のように行なわれていた。著作権の意識が高まった現在では考えられないほどに。

 日本のフォーク・ミュージシャンもこの伝統にのっとって(?)、アメリカの古い歌に日本語の歌詞を載せたりしている。よく知られている例が高田渡だろう。


 たとえば「しらみの旅」の元ネタは「Wabash Cannonball」だと思われる。

 原曲はカーター・ファミリーのほか、ロイ・エイカフやジョニー・キャッシュなど、さまざまな歌手が歌っているが、実はカーター・ファミリーがオリジナルというわけでもないようで、とりあえず19世紀後半まではさかのぼれるようだ。


 また、チャック・ベリーもこのメロディを拝借して「Promised Land」というロックンロール・ナンバーを書いている。


 高田渡「しらみの旅」のバッキングは、はっぴいえんどが担当しているのだけれど、そのアレンジはチャック・ベリー版を参考にした可能性があるのではないか。ベルウッドの伝説的プロデューサー、三浦光紀さんによれば、この頃はっぴいえんどの大瀧詠一さんは「ワタルはロックですよ」と語っていたそうだ。もしかしたらチャック・ベリーのこの曲を踏まえての評価だったのかもしれない。

 最後に、もう1曲。高田渡さんもカバーしていた朝比奈逸人さんの「トンネルの唄」を、オールスター・キャストで。ここにもアメリカの伝統音楽の強い影響が感じられる。上記のムックのために取材をさせていただいた、やぎたこのお二人(やなぎさんと辻井貴子さん)もオートハープにバンジョーにと大活躍されている。