前回の話でご紹介したように、ギブソンに代表されるアメリカン・スタイルのマンドラは、マンドリンの5度下の楽器である。ところが、ヨーロッパや日本でよく使われているボウル・バック(背中の丸い)タイプ(ナポリ・スタイル)のマンドラは、マンドリンのオクターブ下にチューニングされるのが一般的だという。
アメリカン・スタイルでは、マンドリンのオクターブ下の楽器はオクターブ・マンドリンと呼ばれる。一方ナポリ・スタイルでは、マンドリンの5度下の楽器はテナー・マンドラと呼ばれるようだ。このあたりの事情はちょっぴりややこしいので、2つの楽器を混同しないように注意する必要がある。
ギブソンのマンドラは、ティアドロップ・タイプのH、H-1、H-2の3モデルでスタートし、1912年にスクロール・タイプのH-4が追加された。H-4のデザインのスペックは、マンドリンのF-4と同等だ。このF-4、H-4に、マンドセロのK-4を加えた3つのモデルはアーティスト・シリーズと総称されるギブソンのフラグシップ・モデルだった。
1915年製のH-4。注意して見ないとF-4と混同しかねないような外観だ。
念のためにボディをクローズアップしてみよう。トップの塗装は、レッドマホガニー・サンバーストと呼ばれる。セルロイド製だと思われるピックガードは、経年変化で劣化してしまったため取り外してある。
こちらはピックーガードが付いていた頃の姿。ピックガードのブリッジ側がとがっているのは、1917年以前の仕様だ。1917年にはこの角の部分がカットされて丸みをおびたシェープに変わる。
F-4と並べてみると、サイズの違いは一目瞭然。トップの塗装の違いにも注目してほしい。F-4は色の濃いダークマホガニー・サンバーストになっている。レッドマホガニー・サンバーストからダークマホガニー・サンバーストへの移行は1918年とされる。
H-4のテールピース・カバー。上部の装飾部分も刻印された古いタイプのデザインだ。
ペグヘッドの装飾もF-4と同等。ダブルフラワーポットのインレイが美しい。
チューニング・ペグのノブに見られる装飾は上位モデルの証し。
バックのフレイム・メイプルは、センター合わせのブックマッチ(左右対称)ではなくて、1枚板になっている。クランプが取り付けられていた部分には、塗装の剥がれが。
マンドラはマンドリンの5度下ということで、音域の差はあまりない。サウンド的にも地味めな印象で、代表的な演奏例もあまり思いつかない。個人的には、意外とオープン・ポジションでコードを鳴らしながら歌の伴奏をするのに向いた楽器ではないかという気がしている。マンドリンよりもコードの響きが豊かなので。
--というところで、以下は演奏例。
まずはマルチ・プレイヤーのChristian Séguret(クリスチャン・セグレ)が弾く1918年製のH-4。フランス語なので何を言っているのかよくわからないのがナニだけれど^^;ブルース・スタイルの演奏がなかなか面白い。1918年製ということで、すでにトップのフィニッシュはダークマホガニー・サンバーストに変わっている。
続いては、1927年製のH-4のデモ演奏。ペグヘッドにトラスロッド・カバーが付いた関係で、フラワーポットのインレイはシングル・タイプに変更されている。
こちらはギブソンではないけれど、シエラ・ハルによるギルクリストのH-4コピーのデモ演奏。これもブルージーな演奏なのは、たまたまだろうか? ともあれ、マンドラのキャラクターがよくわかる素晴らしいサウンドの楽器だと思う。
まったくの余談だけれど、今回紹介したH-4は、そのギルクリストがセットアップしたものだったそうな。楽器屋さんとメールのやり取りをした際に、その点をやけに強調されたのを覚えている。ギルクリストのH-5コピーは、デビッド・グリスマンさんのワークショップに参加したときに触らせてもらってるんだよな~。
アメリカン・スタイルでは、マンドリンのオクターブ下の楽器はオクターブ・マンドリンと呼ばれる。一方ナポリ・スタイルでは、マンドリンの5度下の楽器はテナー・マンドラと呼ばれるようだ。このあたりの事情はちょっぴりややこしいので、2つの楽器を混同しないように注意する必要がある。
ギブソンのマンドラは、ティアドロップ・タイプのH、H-1、H-2の3モデルでスタートし、1912年にスクロール・タイプのH-4が追加された。H-4のデザインのスペックは、マンドリンのF-4と同等だ。このF-4、H-4に、マンドセロのK-4を加えた3つのモデルはアーティスト・シリーズと総称されるギブソンのフラグシップ・モデルだった。
1915年製のH-4。注意して見ないとF-4と混同しかねないような外観だ。
念のためにボディをクローズアップしてみよう。トップの塗装は、レッドマホガニー・サンバーストと呼ばれる。セルロイド製だと思われるピックガードは、経年変化で劣化してしまったため取り外してある。
こちらはピックーガードが付いていた頃の姿。ピックガードのブリッジ側がとがっているのは、1917年以前の仕様だ。1917年にはこの角の部分がカットされて丸みをおびたシェープに変わる。
F-4と並べてみると、サイズの違いは一目瞭然。トップの塗装の違いにも注目してほしい。F-4は色の濃いダークマホガニー・サンバーストになっている。レッドマホガニー・サンバーストからダークマホガニー・サンバーストへの移行は1918年とされる。
H-4のテールピース・カバー。上部の装飾部分も刻印された古いタイプのデザインだ。
ペグヘッドの装飾もF-4と同等。ダブルフラワーポットのインレイが美しい。
チューニング・ペグのノブに見られる装飾は上位モデルの証し。
バックのフレイム・メイプルは、センター合わせのブックマッチ(左右対称)ではなくて、1枚板になっている。クランプが取り付けられていた部分には、塗装の剥がれが。
マンドラはマンドリンの5度下ということで、音域の差はあまりない。サウンド的にも地味めな印象で、代表的な演奏例もあまり思いつかない。個人的には、意外とオープン・ポジションでコードを鳴らしながら歌の伴奏をするのに向いた楽器ではないかという気がしている。マンドリンよりもコードの響きが豊かなので。
--というところで、以下は演奏例。
まずはマルチ・プレイヤーのChristian Séguret(クリスチャン・セグレ)が弾く1918年製のH-4。フランス語なので何を言っているのかよくわからないのがナニだけれど^^;ブルース・スタイルの演奏がなかなか面白い。1918年製ということで、すでにトップのフィニッシュはダークマホガニー・サンバーストに変わっている。
続いては、1927年製のH-4のデモ演奏。ペグヘッドにトラスロッド・カバーが付いた関係で、フラワーポットのインレイはシングル・タイプに変更されている。
こちらはギブソンではないけれど、シエラ・ハルによるギルクリストのH-4コピーのデモ演奏。これもブルージーな演奏なのは、たまたまだろうか? ともあれ、マンドラのキャラクターがよくわかる素晴らしいサウンドの楽器だと思う。
まったくの余談だけれど、今回紹介したH-4は、そのギルクリストがセットアップしたものだったそうな。楽器屋さんとメールのやり取りをした際に、その点をやけに強調されたのを覚えている。ギルクリストのH-5コピーは、デビッド・グリスマンさんのワークショップに参加したときに触らせてもらってるんだよな~。