ヘンなバンド名だよなぁ。クライング・アンクル・ブルーグラス・バンドだって。「cry uncle」はアメリカのスラングで「参った」「降参」という意味なんだそうな。「give up」とほぼ同義ってことか。このバンド名と関係があるのか、ないのか? ざっとネットを検索してみても由来はわからなかった。ふ~む。

 2024年3月25日(月)。東京・曙橋のバック・イン・タウンに、そんな奇妙な名前を持つアメリカの若手ブルーグラス・バンドのライブを観に行った。カリフォルニアの大学生バンドという風情ながら(マンドリンのテオ・クウェールさんに至ってはまだ高校生くらいの歳のはず)、ブルーグラス界の将来を背負って立つ期待の星として注目されているという。
CryingUncle
 楽器編成は、フィドル、マンドリン、ギター、ウッドベース。全員がボーカルもとる。ブルーグラス・バンドと言いつつ、バンジョーがいないのが面白い。意図した結果なのか、それともたまたまそうなっただけなのかは気になるところだ。

 バンジョーなしの編成、そしてウェストコーストのバンドということで、スタンダードなブルーグラス・バンドとは少し違っているように感じた。とはいえ、楽器のテクニックはすさまじい。さまざまな楽器コンテストで優勝している実力者ぞろい、というふれこみは伊達ではなかった。

 ブルーグラスのレパートリー以外にも、カントリー、ジャズ、ドーグ、そしてボブ・ディランやニール・ヤングの曲までこなす雑食性こそが、彼らの持ち味と言っていいだろう。ボブ・ディランの「Don't Think Twice」、ジョン・ハートフォードの「In Tall Buildings」までは想定内として、ラストにニール・ヤング「Old Man」を持ってきたのには意表を突かれた。考えてみれば、老人に「僕の人生はあなたとよく似てるんだよ」なんて語りかける歌詞は、彼らのいまの境遇にぴったりなのかもね。

 個人的にはボーカルの入らないドーグ・ミュージックが、いちばんしっくりくるような気もしたけれど……。